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しんしょたいこうき

新書太閤記

吉川 英治

01 第一分冊

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 180,256 字 · 361 页

青空文庫

――すると、日吉は、肩を少し昂げて、

「おらは、子どもじゃない。元服しているッ」

と、いった。

突然、小六は、肩をゆすぶって笑い出した。

「――そうか。汝は大人か。……だが、大人だとすると、その扱いをするが、いいか」

「大勢で取りまいて、おら一人をどうする気だ。野武士だな、おまえらは」

「貴さま、いうことがなかなかおもしろい」

「おもしろくない。おらは、いい気もちで眠っていたところだ。おまけに、腹がいたい。誰が来て、何といおうが、ここを動くのは嫌だ」

「ふム。……腹が痛いか」

「痛い」

「どうしたのだ」

「水あたりか、暑気あたりだろ」

「故郷は何処だ」

「尾張の中村だ」

「中村か。――して中村の何という者だな」

「親の名はいえない。おらの名は日吉という。……だが待て待て。ひとの眠っているところを起して、ひとの素姓を洗いだてばかりしていいものか。おぬしは何処の何という者だ」

「汝と同じ、尾張の海東郷、蜂須賀村の蜂須賀小六正勝というものだが、汝のような大人が村の近くにいたとは知らなかった。何か、商いでもして歩いているのか」

――それには答えないで。

「あッ。おじさん達は、海東郷の衆か。