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しんしょたいこうき
新書太閤記
吉川 英治
01 第一分冊
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 180,256 字 · 361 页
だが小六から、
「ほかの小者では、心許ない。先頃、難波内記も賞めておったし、そちならばと、思われるので」
と、いわれたので、嫌も文句もいえなかったのである。
一飯の恩、一宿の義理である。蜂須賀党の端くれに加わって、働くまでの決心はまだつききらないが、
「畏りました」
――云ったからには、七内様でも、あばた様でも、飽くまで誠意をもって、供をして行こうと、日吉は思いきめた。
さて。
出立の日となると、蜂須賀七内はすっかり髪容まで変えて、清洲の油問屋の註文取という旅拵えをして出かけた。
日吉は、この夏、着て歩いていた、針売りの行商着をそのまま着て、少しばかりの荷を背中に負い、油屋の七内とは、道中の道づれという態で、美濃路へ向った。
「猿、往来調べの木戸へかかったら、おれの側を離れて通れよ」
「はい」
「てめえは一体、口達者で、口数が多いから、何を訊かれても、なるたけ黙っているんだぞ」
「へい」
「ボロを出すと、おれは知らん顔して、捨てて行ってしまうぞ」
街道の木戸は、次々にあった。尾張の織田家と、美濃の斎藤家とは、聟と舅との親密な関係にあって、味方同志のはずだが、なかなかそうでない。