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しんしょたいこうき

新書太閤記

吉川 英治

01 第一分冊

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 180,256 字 · 361 页

青空文庫

「水を飼え。――馬に」

河原へ降りると、先頭の武将のひとりが云った。

側を囲んでいた騎馬の侍がすぐ、そのことばを大声で、隊に伝え、

「やすめ」

と、令を布いた。

騎馬の者は、ばらばらと馬を降り、徒歩の兵は、ほっと足を止めて、

ああ!

といわないばかりに皆、草の中に腰を落した。

清洲の城は、川向うの彼方に小さく見えていた。隊の中には、この尾張四郡の領主、織田備後守信秀の弟にあたる織田与三郎がいた。――与三郎は床几に掛け、五、六名の旗本に囲まれ、黙然と、空を見ていた。

「…………」

旗本たちも、口をつぐみ合っていた。脚の傷や、籠手の傷を、縛り直している者もある。この人々の眉色から察するに、前線での戦いは、明らかに、味方の大敗であったに違いなかった。

けれどもとより子ども達に、そういう観察はない。血を見れば、自分が血を流したように勇み、槍や長柄の光を見れば、敵を殲滅して来たものと思いこんで、ただ昂ぶり躁ぐのだった。

「八幡八幡」

「華武者、華武者」

馬に水を飼っていると、馬にも花を投げて囃した。――すると駒のそばにいた一人の侍が、日吉を見かけて、

「弥右衛門の伜。