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しんしょたいこうき

新書太閤記

吉川 英治

01 第一分冊

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 180,256 字 · 361 页

青空文庫

……この野郎、この野郎」

引っ吊して、家に帰ると、また二つ三つ拳をくらわせた。

彼の母が止めると、

「おまえが甘いからいけないのだ」

と、どなりつけ、姉のおつみが一緒になって泣くと、

「何を泣く。わしの折檻は、この拗ね猿を良うしてやろうと思うから撲るのだ。この世話焼かせめ」

と、また撲った。

日吉も、初めは、撲られる度に頭をかかえて、謝っていたが、

「なんだい、なんだい、他所から来やがったくせにして、お父さんみたいな顔して、威張ってやがら。……おらの、おらの、ほんとのお父さんは」

と、囈言みたいに、泣き泣き悪たいを云い出した。

彼の母は、

「これっ……そんなことを」

と、真っ蒼になって、彼の口を抑えたが、筑阿弥は、

「この早熟め」

と、激怒して、今度はゆるさなかった。裏の納屋の中へ抛りこんで、晩飯もやってはならぬぞと云った。

納屋の中から、暗くなるまで、日吉の喚く悪たいが聞えた。

「出しておくれよっ。……ようっ。……出しておくれったらっ。……ばか野郎っ。唐変木っ。……みんな聾づらしてけツかるな。出してくれなければ火をつけるぞう」

そして、わあん、わあん、と吠えるように泣いていたが、夜半近くになると、泣寝入りに寝てしまった。