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しんしょたいこうき

新書太閤記

吉川 英治

01 第一分冊

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 180,256 字 · 361 页

青空文庫

と、云いたそうな顔して、義父の睨む眼を見返した。

そして、かえって、

「お義父さんこそ、百姓もしないで、馬市でばくちしたり、お酒のんだりしないがいいよ。よその人がみんな、おっ母が可哀そうだっていっているぜ」

と、意見した。

「何をいう! 親に向って」

筑阿弥は、一喝で日吉の口を黙らせたが、心のうちでは、

「だんだん摺れからして来やがったわい」

と、日吉を見直した。

他人の中へ出て、家へもどって来るたびに、子の姿は目立って大きくなっている。そして以前と違って、親を観る眼も、家庭を見る眼も、急に育って来たように思われる。筑阿弥は、その大人みたいな眼で自分を観察されるのが、うるさいし、恐いし、嫌でならなかった。

「はやく奉公口を探して出て行け」

翌日、もう日吉は、次の雇主の所へ行っていた。

やはり村の桶屋だった。

桶屋のおかみさんから、

「こんな末恐ろしい子は、わしが所へなど置けん」

というて、ひと月ばかりで帰された。

日吉の母は、何が末恐ろしいのか、世間の人のいう意味がわからなかった。

左官屋の手伝いにも行った。馬市の弁当売りにも行った。鍛冶屋へも行った。どこも三月か半年だった。