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しんしょたいこうき

新書太閤記

吉川 英治

01 第一分冊

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 180,256 字 · 361 页

青空文庫

「御所望ならば」

と好む者へは、茶をたてて清雅なもてなしもした。

東山殿が茶事の数寄を称えられてから、その余風が、いつか民間にも移っていた。その影響がまた、民家の畳とか障子とか、床の間とか、箸茶碗の好みにまで、自然と変化を促して来て、知らず識らず茶は生活の中へはいっていた。

わけて瀬戸村一帯で焼かれる特色のある陶器は、その淡雅な味が、茶の用器に多く需要されだしてきたので、職人たちでも、茶をのむことを知っていた。――また、狭い小部屋の中で、一輪の花と、一服の茶だけで、その間、戦乱の世の中も、苦悩の人生も、ふと忘れて、濁世のなかにも気を養うという術を、理窟なく覚えていた。

「これは、お内儀どのか」

四十がらみの骨太な武士であった。次々と集まる客の中に入り交じって来ていた一人なのである。茶席へはいって来ると、茶わん屋の妻へいんぎんに挨拶をして、

「てまえは御親類の米野の七郎兵衛どのの知合でござる。七郎兵衛どのの御案内で参る約束でござったが、生憎と、その七郎兵衛どのがお風邪気とやらのため、不勝手ながら、一人でお招きへ寄せてもらいに参った」

と述べ、

「御厨の渡辺天蔵で」