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ぎじんのすがた
日本の怪談
田中 貢太郎
田中貢太郎『日本の怪談』。同一底本的分册已合并为一书。收入:義人の姿、宝蔵の短刀、村の怪談、猫の踊、幽霊の自筆、狐の手帳、貧乏神物語、怪僧、庭の怪、八人みさきの話、一緒に歩く亡霊。
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 56,030 字 · 115 页
腕自慢の若侍があった。彼は奇怪な狸の噂を聞いて、その狸を退治すると云って、ある日一人で山の中へ入って往った。
と、むこうの方から振袖を着た※(きれい)な女が来た。若侍は不思議に思った。草刈娘なら兎も角、こうした処へ振袖を着た※な女が一人で来ると云うのは、頗る奇怪である。まてよ、もしかすると、あれが狸の化けたのかも判らないぞ、と、彼は横眼を使いながら女の方に注意していた。壮(わか)いおどおどした女にも以合わず、荊棘の上も、萱の中もかまわず、ひらひらと歩いて来た。さては、と、彼は思った。
女は白いあどけない顔に微笑を見せながら寄って来た。若侍も微笑を見せて女の来るのを待っていた。
女の艶かしい顔が眼の前にあった。若侍は抜く手も見せず、腰の刀を抜いて斬りつけた。女は声を立てずに倒れたが、それはまぎれもない女の死骸であった。若侍は周章(あわ)てだした。狸ではなしに人であったら、恐れに眼が暗んで人と狸とまちがえたと云って世間から笑われる、もしそうであったら、とても生きてはいられない、と、彼は女の死骸を見つめていた。
三人伴(づれ)の侍女(こしもと)らしい女が走って来た。