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ぎじんのすがた
日本の怪談
田中 貢太郎
田中貢太郎『日本の怪談』。同一底本的分册已合并为一书。收入:義人の姿、宝蔵の短刀、村の怪談、猫の踊、幽霊の自筆、狐の手帳、貧乏神物語、怪僧、庭の怪、八人みさきの話、一緒に歩く亡霊。
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 56,030 字 · 115 页
「そうだなあ、お父さんが帰ってくれると、狐でも狸でもよう来ないだろうに」
「そうですとも」
夕飯の時にも飯の後で老婆と新一が茶の間の行灯の傍で囁き合っていた。
「今晩は、坊ちゃんは、茶の間へ寝てください、私は奥へ寝ます、そして、どんなものが来るか、気を注けていようじゃありませんか」
「好いとも、おいらが茶の間で寝よう、そして、へんな奴が来たなら斬ってやる」
「そうですよ、かまうことはない、怪しい奴が来たなら、それこそ斬っておやりなさい」
「斬ってやるよ」
老婆と新一は宵に約束したように寝ることにして、老婆の寝床は奥の室へとり、新一の寝床は茶の間にとって二人は別れ別れに寝たが、その新一の枕頭には行灯を置いてあった。
新一は左の手に持った短刀を外へ見えないように夜着のなかへ隠して、仰向けに寝ながら枕頭の左右に注意していた。
そのうちに夜が刻々と更けて往った。母親も睡っているのか何の音もしなければ、老婆が平生の癖の痰が咽喉にこびりつくような咳も聞えない。ただ庖厨の流槽の方で鼠であろうことことと云う音が聞えるばかりであった。新一はその音を聞いていたが何時の間にかうとうととして来た。