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ぎじんのすがた
日本の怪談
田中 貢太郎
田中貢太郎『日本の怪談』。同一底本的分册已合并为一书。收入:義人の姿、宝蔵の短刀、村の怪談、猫の踊、幽霊の自筆、狐の手帳、貧乏神物語、怪僧、庭の怪、八人みさきの話、一緒に歩く亡霊。
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 56,030 字 · 115 页
ただ新一は彼の怪しい獣を逃がしたのが残念でならないので、短刀を抜いて怪しい血糊を見たり、吉から聞いた銀山の鼠取のことを考えてみたりした。
某日新一は、やはりその怪しい獣のことを考えながら、往くともなしに寺の卵塔場の中へ入って往った。それは風のない夕方のことで夕陽が微赤い光をそのあたりに投げていた。新一は石碑の間を彼方此方と潜って歩いているうちに、一処平べったい大きな石碑が横に倒れて、それが芒の中に半ば隠れている処へ出た。新一はこんなに石碑が倒れているのに何故起してやらないのだろうと思いながら、ふと見ると、その倒れた石碑の上に茶色の毛をした犬のような細長い獣が人間の腹這いになったように寝ていたが、それが小さな帳面を前へ置いて、一心になって見ているような容をしていた。新一は不思議なことをする獣だと思っていきなり大きな声を立てた。と、獣は吃驚して跳びあがるなり逃げて往ったが、直ぐ傍の石碑の陰へ隠れて見えなくなった。
新一は獣の癖になにを見ているだろうと思って、その跡へ往ってその帳面のようなものを拾ってみた。それは半紙を三枚綴り合せて、片仮名のような文字を微青く書いたものであった。