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ぎじんのすがた
日本の怪談
田中 貢太郎
田中貢太郎『日本の怪談』。同一底本的分册已合并为一书。收入:義人の姿、宝蔵の短刀、村の怪談、猫の踊、幽霊の自筆、狐の手帳、貧乏神物語、怪僧、庭の怪、八人みさきの話、一緒に歩く亡霊。
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 56,030 字 · 115 页
「煩い」
「煩くっても、そんな処へ寝ていちゃいけない、入んな」
「お前さんのような奴が、其処にいちゃ入れないよ、痴」
「じゃ、俺は彼方へ往くから、入んな」
「煩いよ、余計なことを云うない」
お滝は跳び起きるように起きて新三郎に突っかかって来ようとした。新三郎が体をかわすとお滝はそのまま寝床の上へ往って俯向きになり、大声を出して泣きだした。
「苦しい、苦しい、なんの恨みがあって、俺をこんなに苦しめるのだ」
新三郎は障子を締めて奥の室へ往こうとした。新一が起きて来て其処に立っていた。
「お父さん、また狐が来たのだね」
「そうだろう、狐だろう」
翌日になって新三郎は下谷の御嶽行者の処へ往って祈祷を頼んで来た。新三郎はそれで幾等かお滝の病気が好くなるだろうと思っていたが、その一方で新一は油揚げを三枚買い、それに鼠取を入れて卵塔場の中へ持って往った。
その夜お滝は非常に穏かで怪しい挙動もせずに寝た。新三郎も老婆も祈祷のお陰であると思って悦んだ。そして、朝になって皆より早く起きた老婆が庖厨口の戸を開けてみると、簷下に一疋の獣が死んでいた。老婆の声を聞きつけて新三郎も起きて来た。