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ちえのいちたろう
智恵の一太郎
江戸川 乱歩
象の鼻「少年倶楽部」大日本雄弁会講談社、1942(昭和17)年1月<br>消えた足跡「少年倶楽部」大日本雄弁会講談社、1942(昭和17)年2月<br>智恵の火「少年倶楽部」大日本雄弁会講談社、1942(昭和17)年3月<br>名探偵「少年倶楽部」大日本雄弁会講談社、1942(昭和17)年4月<br>空中曲芸師「少年倶楽部」大日本雄弁会講談社、1942(昭和17)年5月<br>針の穴「少年倶楽部」大日本雄弁会講談社、1942(昭和17)年6月<br>お雛様の花びん「少年倶楽部」大日本雄弁会講談社、1942(昭和17)年7月<br>幼虫の曲芸「少年倶楽部」大日本雄弁会講談社、1942(昭和17)年8月<br>冷たい火「少年倶楽部」大日本雄弁会講談社、1942(昭和17)年9月<br>魔法眼鏡「少年倶楽部」大日本雄弁会講談社、1942(昭和17)年10月<br>月とゴム風船「少年倶楽部」大日本雄弁会講談社、1942(昭和17)年11月<br>兎とカタツムリ「少年倶楽部」大日本雄弁会講談社、1942(昭和17)年12月<br>白と黒「少年倶楽部」大日本雄弁会講談社、1943(昭和18)年1月<br>風のふしぎ「少年倶楽部」大日本雄弁会講談社、1943(昭和18)年4月<br>飛行機を生み出すたのもしい力「少年倶楽部」大日本雄弁会講談社、1943(昭和18)年7月
N3 · 进阶 · 新字新假名 · 67,333 字 · 134 页
今、マリを取出して上げるから」
そう云いすてて、一太郎君は裏庭の方へかけ出して行きましたが、しばらくしますと、バケツの中へ、一ぱい水をくんで帰って来ました。
「サア、いいかい。見ててごらんよ」
一太郎君は、アッケにとられている二人の前で、そのバケツの水を、深い穴の中へザーッと流しこみました。
するとどんなことが起ったでしょう。読者諸君はもうとっくにおわかりでしょう。バケツの水が流れこむにつれて、せまい穴の中の水かさは、だんだんまして来るのです。おしまいには穴の口のすぐ近くまで、水で一ぱいになってしまいました。ゴムマリは水よりも軽いのです。穴が水で一ぱいになれば、マリは穴の入口のところまで浮上ってくるわけではありませんか。
賢ちゃんは、なんなく浮上ったマリを拾い取りました。そして、広ちゃんと二人で、さも感心したように、一太郎君の顔をながめるのでした。
「やっぱりえらいや。ねえ、広ちゃん」
「ウン、智恵の一太郎だもの」
そして、二人の少年は、口々に「ありがとう」「ありがとう」とくり返しながら、枝折戸を出て行きました。
一太郎君が二人を見おくって、縁側にもどって来ます、とお母さんはミシンをとめて、ニコニコしながら、こちらを見ておいでになりました。