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こよみ

暦

壺井 栄

「新潮」1940(昭和15)年2月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 56,332 字 · 112 页

青空文庫

その友吉爺さんに向って、高子の、

「おっさん、達者でくしゃみしよるか」

という挨拶に皆が笑いだした。おっさんもいっしょに歯のない口を開け、

「わいらのお父つぁんがよういよったれ、友吉のくしゃみと医者どんの雨戸はいつやむか見当がつかんとなあ」

それをきっかけのように話はお互いに通じ合う日向の家の昔語りに移っていった。

「わしが弟子入りした時にはミチさんがこのくらいじゃった」と、正太郎は手の平で自分の股のあたりの空気を押えつけるようにし、

「次々生れてのう、まるで小んまい学校のようじゃった」と、皆の顔を見回すと、

「我子だけじゃないもんな」と、友吉爺さんがいう。

「げにやかましゅあったのう。じゃが、十人兄妹がふが悪いと思たこともあったけど、こうしてみるとちっともはあ、多すぎゃあせんのう」と、ミチが答える。

「私はまた九人というのは勘定が悪いから実枝を生んで十人にしたんじゃと思いこんどった、そういや、たしかお母さんがそういうたように思う」と、クニ子は皆をふきださせ、女学校の入学願書に日向重吉、いね八女と書く時に三女ぐらいだとどんなによかろうと恥かしかったという。

「そんなら実枝は九女で」