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こよみ
暦
壺井 栄
「新潮」1940(昭和15)年2月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 56,332 字 · 112 页
たりした。
三人の姉は、三様の帰り方で、家の中はまたもとの二人になった。見送りから帰ると、クニ子も実枝も自分たちが旅から帰ってでも来たようにくたびれた。クニ子はやれやれという顔つきで仰向けに寝そべり、大きく伸びをした。
「疲れたろ姉やん、姉やんは昼夜のつとめじゃったせにな」
ここ二三日、ほとんど徹夜なことに思いやりをこめて、実枝はクニ子のそばへ並んで横になった。
「あないなりとうないわ、ほんまに」
目をつぶったなりでこっちへは顔も向けず、怒ったようにいうクニ子を、実枝はまじまじと見つめた。姉たちが来れば当然クニ子や自分の将来についてもそれぞれの意見が出るだろうという実枝の期待もみごとに外れて、ミチもカヤノも自分のことで手いっぱいであるらしかった。真正面からクニ子を説きつけたのは高子だけであったが、その前にミチやカヤノの並べたてたくり言は、クニ子を十分に滅入りこませるようなことばかりであったにちがいない。
「めったに嫁にはゆけんのう」というクニ子の複雑な気持を聞いてやるゆとりも持たず、ミチもカヤノもその時の自分の気持のありかただけで、亭主持つのも考えものだと、あっさり流してしまった不親切さを、実枝はぎりぎり歯をかみたく思った。