轻松读懂日语经典作品
ja-reading.com
轻松读懂日语,轻松阅读日语。在线阅读日语经典作品。支持在阅读过程中显示假名、查询生词、翻译句子。
こよみ
暦
壺井 栄
「新潮」1940(昭和15)年2月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 56,332 字 · 112 页
「おじやん、お前の孫が来たぞよ、いうてな」
「小んまい石塔に、小豆島甚作、いうて書いてあるといや」
孫たちはその言葉の抑揚までを真似ていい終り、きゃっきゃっと笑う。半分はかやをばかにしたような調子であるのだが、かやはそれでもやっぱり目尻に皺をよせ、丸い頬を垂れていっしょになって笑い、
「今日びは便利がえいせになあ、お前らも伊勢に詣ったらその時は忘れんと墓いまいってあげよ、お伊勢さんのすぐに近所じゃといや。おばあの代りに来たぞよ、お前の孫が来たぞよ、いうてな」
と結んだり、また時には、
「船乗りの嫁にはなるだけゆくなよ」ということもあった。炬燵の中で小さい孫を膝にのせ、暑い夏の日、日陰の涼み台の上で、ある時はそら豆の皮などむきながら、またある時は孫と向い合ってひき臼を回しながら、歌でも歌うような調子でかやの甚作どんの話はくり返された。
ある日、五番目の孫の八重は学校から帰ってくるなり納屋の前で莚をひろげ、草履を作っているかやのそばへ、でんと坐りこんだ。
「おばあ、あったぞ、あったぞ」
風呂敷をひろげ、地理付図を取りだした。八重はその日三重県の地理を習ったのである。