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こよみ
暦
壺井 栄
「新潮」1940(昭和15)年2月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 56,332 字 · 112 页
と、もう自慢で花のそばへ案内した。
そんな工合にクニ子の草花への心の持ち方は異常なものがあった。
今年もまた、クニ子の独り約束で蒔かれた朝顔は近所合壁の垣根や窓先に芽生えかけている。花にはまだ遠いがやがていっせいに咲きだすであろうし、そしたらクニ子は満足の顔つきで花に見送られてゆうゆうと出かけ、やがて夏も終りかけるころには葉鶏頭やコスモスなどにとりかこまれた家々の間の小径を、夕陽にまぶしく照りかがやくそれらの花を生徒を眺めるようににこやかに、胸を張って帰ってくるであろう。
そういうクニ子のことを、実枝はこのごろいろいろ考えるのであった。一昨年までは病気の父親を抱えて結婚したくもできなかったのでもあるが、それでなくてもクニ子は縁談が持ち上るたびにいやがった。
「あれはな、うちが先生しよらなんだら貰いに来やせん。うちの月給と結婚したいんで」
またある時は、
「実枝、聞いたか、男いうもんはあんなんど。やれ財産があるの、やれ何とか議員でござるの、まま子が三人あることは忘れとったように帰にしなに小んまい声でいうたなあ」
そういってふっふっと笑うクニ子。そしてこのごろでは仲人に立つ人がその話にかかると、