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こよみ

暦

壺井 栄

「新潮」1940(昭和15)年2月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 56,332 字 · 112 页

青空文庫

「実枝、高姉さんくなら行きたいけんどなあ」といってみる。今度は重吉が黙っていた。

そんなことが何度もくりかえされ、結局説き伏せられて、実枝は小学校がすみしだいカヤノの家に引きとられることになった。母親の死後、重吉の一番心配なのは実枝の将来についてであった。ミチもカヤノもいつでも引取ろうといって帰っていったのであったが、実枝はあまりに年のかけ離れたこの二人の姉夫婦に他人行儀な気持しか持てなかった。母親の葬式の時初めて来たカヤノの夫は、べったりとしたような声で、おとなしかったらうちの子にしてあげるで、と実枝を抱いた。それが実枝がいやだという。いつも白足袋をはいていることもどうしても好きになれないものを感じた。むしろミチ姉の方が居心地よさそうであったが、そこには五人もの男の子がいるし、それに実枝は女学校へは入りたかった。クニ子が、実枝は絵を好きで、また上手でもあるからゆくゆくは絵の学校へ入れてやったらという意見をのべると、カヤノの夫の作太郎はへらへらと笑って取合わなかった。そんなことも実枝の気持を重くしていた。実枝のその気持を汲んでクニ子も初めのうちは神戸ゆきを反対していたが、まだ二十歳をすぎたばかりの自分が小学校の先生ぐらいでこれから先、実枝をどうしてやれるという自信もなく、結局重吉と二人で実枝に因果をふくめ