轻读日语

轻松读懂日语经典作品

ja-reading.com

轻松读懂日语,轻松阅读日语。在线阅读日语经典作品。支持在阅读过程中显示假名、查询生词、翻译句子。

こよみ

暦

壺井 栄

「新潮」1940(昭和15)年2月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 56,332 字 · 112 页

青空文庫

そんな日は重吉自身小さい燗徳利をもっておよねの店まで一合の酒を買いに行った。いねに死なれてからその一合の晩酌が何よりの楽しみらしく、重吉がおかずを作る日はだんだん多くなり、やがて毎日のことになってしまった。長火鉢の前に胡坐をかいて、晩飯のすんだあとまでとろりとした顔つきでいつまでもそこを離れようとしない。たった一つきりの電灯は長いコードをひきずって、他の室の隅々まで届くようになっている。その電灯をクニ子が座敷へ持っていったあとまで、重吉は暗い茶の間で煙管の音だけの一と時を過し、時には一合五勺にふえた酒のわざで、ろくに呂律のまわらぬ浄瑠璃をあやつるようなこともあった。自分の食い扶持は働ける間は働かにゃと、留守番の昼間をぼつぼつと桶の輪替えなどしていた。それはまるで働ける自分を楽しみきっているかのような様子であった。仕事の合間には、一と昔前の埃をかぶっている榑の束も出してきて小さい桶や、お櫃や、蓋つきの魚舟を作った。すしはんぼや、可愛らしい握りの手桶をこしらえた。お櫃は箍をみがき、すしはんぼは紙やすりをかけた。それらの製品はできるしだいに姿を消していく。