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こよみ

暦

壺井 栄

「新潮」1940(昭和15)年2月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 56,332 字 · 112 页

青空文庫

であろうし、何か具体的な方針も与えてくれるであろうと期待した。

三人の姉たちはそれぞれの家庭の雰囲気を背負ってやってきた。一ばん早く来た長姉のミチはクニ子が勤めに出たあと、実枝ひとりになる家の中を眺め回し、

「げに不思議じゃのう、ようもはあ、あの日向の家にでものう――」

と、言葉まで広島弁になりきって、自分たちの育った昔の日向と、今のひっそりとした家の中とを比べて感慨深く首を左右にふった。そしてさも世帯に疲れはてたとでもいう風に、暇さえあればぐうぐう眠りつづけた。そしてクニ子が帰宅するとミチはきゅうにしゃべりだし、二人を並べておいて愚痴たらだらに夜を更かした。亭主の万吉が毎晩のように大酒を呑んで帰ってこず、門の外に寝ているのを朝起きて気がついただとか、五人の男の子が揃って腕白で、四番目の清は毎日袖をち切ったり、ズボンを破らぬ日がないとか、末っ子の耕造は近所じゅうの子供を泣かせて、毎日どこかの家から口説が来るのであやまりに行かぬ日がないとか、かと思うとその一人一人の子供が自慢のたねになり、そのいたずらも利口さゆえであるようなことをいう。こまこまと、しちくどく同じようなことを繰り返し、結局は女の身をくやむ言葉に落ちてゆくのであった。