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ほんじょりょうごく
本所両国
「東京日日新聞」1927(昭和2)年5月6日〜22日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 21,005 字 · 43 页
愛聖館の掲示板にこういう言葉を書いた人は或はこの事実を知らなかったかも知れない。が、確かにこういう言葉は現世の本所の或場末に生活している人々の気持ちを代弁することになっているであろう。尤も子供の多い程暮しも楽だということは子供自身には仕合せかどうか、多少の疑問のあることは事実である。
それから僕等は通りがかりにちょっと萩寺を見物した。萩寺も突っかい棒はしてあるものの、幸い震災には焼けずにすんだらしい。けれども萩の四、五株しかない上、落合直文先生の石碑を前にした古池の水も渇れ/\になっているのは哀れだった。ただこの古池に臨んだ茶室だけは昔よりも一層もの寂びている。僕は萩寺の門を出ながら、昔は本所の猿江にあった僕の家の菩提寺を思い出した。この寺には何でも司馬江漢や小林平八郎の墓の外に名高い浦里時次郎の比翼塚も建っていたものである。僕の司馬江漢を知ったのは勿論余り古いことではない。しかし義士の討入りの夜に両刀を揮って闘った振り袖姿の小林平八郎は小学時代の僕などには実に英雄そのものだった。それから浦里時次郎も、――僕はあらゆる東京人のように芝居には悪縁の深いものである。