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ほんじょりょうごく
本所両国
「東京日日新聞」1927(昭和2)年5月6日〜22日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 21,005 字 · 43 页
錦糸堀
今は船橋屋の前も広い新開の往来の向うに二階建の商店が何軒も軒を並べている。……
錦糸堀
僕は天神橋の袂から又円タクに乗ることにした。この界隈はどこを見ても、――僕はもう今昔の変化を云々するのにも退屈した。僕の目に触れるものは半ば出来上った小公園である。或はトタン塀を繞らした工場である。或は又見すぼらしいバラックである。斎藤茂吉氏は何かの機会に「ものゝ行きとどまらめやも」と歌い上げた。しかし今日の本所は「ものゝ行き」を現していない。そこにあるものは震災のために生じた「ものゝ飛び」に近いものである。僕は昔この辺に糧秣廠のあったことを思い出し、更にその糧秣廠に火事のあったことを思い出し、如露亦如電という言葉は必ずしも誇張ではないことを感じた。
僕の通っていた第三中学校も鉄筋コンクリートに変っている。僕はこの中学校へ五年の間通いつづけた。当時の校舎も震災のために灰になってしまったのであろう。が、僕の中学時代には鼠色のペンキを塗った二階建の木造だった。それから校舎のまわりにはポプラァが何本かそよいでいた。(この界隈は土の痩せているためにポプラァ以外の木は育ち悪かったのである。