轻松读懂日语经典作品
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ほんじょみぞれがし
本所霙河岸
山本 周五郎
「婦人倶楽部」大日本雄辯會講談社、1939(昭和14)年5月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 12,115 字 · 24 页
「金は無い、金は無いと申すのだ」
落魄れた浪人者が一人、小女を尻眼にしてよろよろと立上るのが見えた。
垢染みた袷の重着によれよれの袴、鬢髪も、濃い髭も茫々と伸びて、悪酔いをしたらしい大きな眼だけがぎらぎらと光っている、――蒼くなった小女は恐ろしそうに主人のほうへ走って行った。しかしそれより先に、
「なめた野郎だ」
と云いながら喜三郎が立上った。そして今しも草履をはこうとしている浪人者の前へ、
「おう浪人さん、ちょいと待ちねえ」
と立塞がった。
「なんだ貴様は」
「おらあや組の鳶で喜三郎てえ者だ、口幅ってえがこの界隈で変な真似をするやつがありゃあ取仕切りをするのがおいらの役なんだ。――浪人さん、飲んで食っただけの銭を置いてったらどうだい」
「いま持合せが無い」
「ではお宅まで供をしようか」
「その家も無いよ」
「じゃあどうするんだ」
喜三郎はくるっと片肌を脱いだ。――すわとばかり、店いっぱいの客は一斉に立上る、喜三郎の伴れの若者たちも、いつか浪人の左右を遠巻にしていた、
「どうすると云って」
浪人は静かに草履をはいた。
「また都合のついた時に持って参る」
「ふざけるな! 金もねえ家もねえ、それじゃあてめえは食逃げだな、初めっから踏倒すつもりでへえって来ゃあがったんだろう」