轻松读懂日语经典作品
ja-reading.com
轻松读懂日语,轻松阅读日语。在线阅读日语经典作品。支持在阅读过程中显示假名、查询生词、翻译句子。
もみノきはのこった
樅ノ木は残った
山本 周五郎
01 第一部
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 148,519 字 · 296 页
「おかしなことを云うぞ」
「なにがおかしい、義に当面すれば、身命を鴻毛よりも軽しとするのが、侍の本分ではないか」
「おかしなことを申す」と十左が云った、「それではおれが、身命を惜しんだように聞えるぞ」
「これは一般論だ」
「いやそうではあるまい」
十左の声が高くなった。甲斐はちょっと筆をとめた。筆をとめて、十左と七十郎の高ごえを聞き、あるかなきかに頬笑んだ。
「二人よればすぐに始まる」と彼は呟いた。
「困ったお国ぶりだ」
そしてまた手紙に向かった。
――自分は筋目の家柄ではあるが、まだ評定役でしかないし、それに考えることもあるので、重臣会議にはなるべく出ないようにしている。聞くところによると、会議は殆んど一ノ関(伊達兵部少輔宗勝)さまの自由にされているらしい。御承知のように一ノ関さまは、酒井侯と昵懇のうえ、姻戚関係にもあることだし、酒井侯はまた幕府閣老のなかでも権勢のさかんな人であるため、一ノ関さまの発言には、誰も正面から反対ができないもようである。
甲斐がそこまで書いたとき、向うの座敷の声がさらに高くなり、里見十左衛門のかん高くどなるのが聞えた。伊東七十郎の声も高いが、それは平然として動じない調子をもっていた。