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もみノきはのこった
樅ノ木は残った
山本 周五郎
01 第一部
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 148,519 字 · 296 页
「――渡辺金兵衛ら三人の行為がしんじつ斬奸であるにしても、その手段が法を無視している点は、ゆるすわけにはいかない」勘解由はそう云った、「もしもこれを黙認すれば、第二、第三と同じような事が起こるおそれがあるし、藩家のおため――という名目が、不当に愛用される心配もある、これはぜひ審問にかけて、はっきりと裁きをすべきだと思う」
甲斐は黙って聞いていた。
勘解由の説に他の四五の者が反対した。根拠のはっきりした反対ではなく、重臣たちの意向を盾にとったもので、伊達家の浮沈とか、大事のまえの小事とか、すべて穏便になどという、当り触りのない言葉を並べるだけであった。その漠然とした反対意見を、かれらは辛抱づよく固執した。
勘解由もあとへひかなかった。
甲斐はなにも発言せず、両者の云い分を聞いていた。
遠山勘解由は、奥山大学の弟であった。大学はいま仙台にいる、勘解由が自説をつよく主張するのは大学の意志によるものと考えられた。仙台にいる大学から、勘解由になにか命じて来たに違いない。そうでなければ、新任早々の彼にそんな頑強な態度がとれる筈はなかった。
甲斐はそう推察していたが、他の者は気がつかないらしい。