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じろうものがたり

次郎物語

下村 湖人

04 第四部

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 178,724 字 · 355 页

青空文庫

ねえ、道江さん。」

「ええ、まさか。」

と、道江は笑ったが、すぐ真顔になり、

「次郎さん、ほんとにストライキのこと頑張って下さいね。あたし、血書のことちっとも知らなかったけれど、今きいてびっくりしたわ。それでストライキの主謀者にされちゃあ、つまらないんですもの。」

次郎は何か物足りない気がしながら、それでも、いつもの道江とはかなりちがった道江をその言葉に見出して、だまってうなずいた。すると、また道江が言った。

「あたしのことは、もうほんとに大丈夫よ。これまで、あたし、あんまりのんきだったと思うの。次郎さんのお話をきいて、それに気がついたわ。女も、自分のことぐらい自分で始末するようにならないと、だめね。」

次郎はうれしいというよりは、何か驚きに似たものを感じた。彼は、これまで、道江の口から、そうした自己反省的な言葉を一度もきいたことがなかったのである。

それから話は次郎の学校の問題を中心に、いろいろのことに飛んで行った。朝倉先生の門のあたりに、もう私服の刑事がうろついているらしい、という次郎の話から、だんだんと花が咲いて、徹太郎は、ナチス独逸やソ連の例などをひき、「軍国主義と独裁政治と秘密探偵とは切っても切れないものだが、日本も今にそんな国になるかも知れない。