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じろうものがたり

次郎物語

下村 湖人

04 第四部

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 178,724 字 · 355 页

青空文庫

」

次郎の声は、その時いくぶんふるえており、眼に涙がにじんでいそうに思われた。

みんなは、つい、しいんとなってしまった。そして生徒大会のことも、それで立消えになってしまったのである。

生徒大会のことがどうなり片づくと、次郎は機を失せず、

「朝倉先生の問題に関するかぎり、校友会の委員会はもう今日で打切りにしたい。で、今日のうちに先生送別の方法について考えておこうではないか。」

と提案した。

これには、新賀や梅本でさえさすがに変な顔をした。むろん馬田一派はここだとばかり猛烈に反撃して来た。

「血書を撤回しない以上、留任運動は今でもつづいているということがわからんのか。」

「委員会なくして何が留任運動だ。」

「血書万能の夢も大ていにしろ。」

「おもてで留任運動、うらで送別会の計画、僕たちにはわけがわからんよ。」

「こんどは送別の辞でも書きたいのだろう。」

「なあに、送別の辞は血書より早く出来ているんだよ。」

そんな罵声やら、冷かしやらが、方々から起った。しかし、そこいらまではまだいい方であった。あとでは、次郎を真正面から、偽善者だ、卑怯者だ、裏切者だ、とののしり、彼に退場を要求するものさえ出て来た。