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じろうものがたり

次郎物語

下村 湖人

04 第四部

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 178,724 字 · 355 页

青空文庫

」

「しかし、とにかく、本田の態度がその女に動かされていることだけはたしからしい。」

「あるいはそうかも知れん。いやに考えこんだり、気狂いのように人にくってかかったり、意見がぐらぐら変ったりするところは、全く変だ。」

「けしからん奴だ。制裁してやれ。」

「そのうち、きっと何かはじまるだろう。」

噂は、こうして尾鰭をつけ、それが生徒たちのざわめきに輪をかけることになって来たのだった。

こうした噂は、むろん次郎の耳にもはいらないわけはなかった。彼はそれが馬田一派の宣伝だと思うと、無性に腹が立った。しかし今は何もかも朝倉先生のために我慢する気で、誰にも弁解一つせず、新賀や梅本がそんな噂を打消すために骨を折っているときいた時にも、彼の方から、放っといてくれるように頼んだぐらいであった。

事件が片づいてから、彼は毎日時間どおりに登校し、時間どおりに家にかえった。校内ではいつも沈默がちであり、孤独であった。帰り途には、きまって朝倉先生をたずねてみたいという衝動に駆られたが、それが先生の立場をわるくすることになりはしないかと気づかって、いつも自制した。そして、家に帰るとすぐ、畑や鶏舎の手伝いをやり、夜は、しばらくほってあった学課の勉強や、その他の読書に専念した。