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じろうものがたり

次郎物語

下村 湖人

04 第四部

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 178,724 字 · 355 页

青空文庫

「やっと発表になったよ。」

次郎を見ると、先生はすぐそう言って笑った。次郎は、お辞儀をしたきり、顔をふせてだまっていた。玄関をあがってここまで来る間に見た家の中の光景が、彼の気持をはげしくゆすぶっていたのである。

「掲示はもう出たのかい。」

「はい。」

「とにかく変なさわぎにならなくてよかったね。」

「はい。」

「君に大変骨を折って貰ったそうで、ありがとう。」

次郎はやっとまともに先生の顔を見た。先生もまともに次郎を見ていた。深く澄んだ眼の底から、愛情が白百合のように匂って来るのを感じながら、次郎はたずねた。

「僕たちのやっていたこと、先生にもわかっていたんですか。」

「わかっていたよ、あらましのことは。」

「どうしておわかりだったんです。だれか生徒がおたずねしたんですか。」

「生徒は来ない。しかし、君のお父さんが何度も来て下すったんでね。」

「父が?……そうですか。」

次郎はちょっと意外だった。しかし、考えてみると、ありそうなことではあった。

「来ていただいては君のためによくないと思って、何度もそう申したんだが、お父さんは、『大丈夫だ。次郎も本筋だけは大してまちがっていないようだから』