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じろうものがたり

次郎物語

下村 湖人

04 第四部

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 178,724 字 · 355 页

青空文庫

それから間もなくだった。茶の間から座敷にかけての瓦廂を、人の歩くらしい音が、ひっきりなしにきこえ、二階が何となくざわめき立って来た。静粛を保とうとする努力を、弾んだ肉体がたえず裏切っているといった音である。

俊亮と大沢とはずるそうに眼を見あった。恭一は少し顔をあからめてうなだれた。俊三もうなだれたが、しかし彼はこらえきれぬ可笑しさを押しつぶそうとしているかのようであった。

朝倉先生夫妻は耳をそばだて、眼を光らせて、天井を見た。

「何です、あの音は?」

朝倉先生は腰をうかすようにしてたずねた。

「きょうは、先生ご夫妻に、月見かたがた芝居をご覧に入れる趣向なんです。」

「芝居ですって?」

「筋書きは次郎と私との合作ですがね。」

廂にはもう音がしない。二階のざわめきもしだいに落ちついて来た。

朝倉先生は、さぐるような眼をして、しばらく俊亮を見ていたが、

「生徒ではありませんか……白鳥会の連中でしょう。」

それはいかにも詰問するような調子だった。

「ご賢察のとおりです。とうとう悪事露見ですかね。ははは。」

朝倉先生は、しかし、笑わなかった。そしてちょっと眼をふせて考えていたが、