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じろうものがたり

次郎物語

下村 湖人

04 第四部

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 178,724 字 · 355 页

青空文庫

送別式に何かの波瀾を予想し、興味本位でそれを期待していた生徒たちも決して少くはなかった。彼らは、見送りのために校庭に集合しながら、くちぐちに言った。

「つまんなかったなあ。……朝倉先生、もっと何か言うかと思っていたよ。」

「僕は、先生の最後の雄弁をきくつもりで張りきっていたんだが、がっかりしたね。」

「何んだか、ばかにされたような気がするね。」

「うむ。しかし、校長はほっとしたんだろう。」

「校長を安心させて、僕たちを失望させるって法はないよ。」

「朝倉先生も今日はどうかしていたね。」

「妥協したんじゃないかな。」

「そうかも知れん。でなけりゃあ、もう少しぐらい何か言うはずだよ。」

「しかし、辞職してしまってから妥協したって、何にもならんじゃないか。」

「これからさきのことを考えたんだよ、きっと。」

「ふうん、そうかもしれんね。」

「このごろは、一度憲兵ににらまれた人は、よほどおとなしくしないと、日本国中どこに行ってもにらまれるそうだからね。」

「そんなこと、誰にきいたんだい。」

「曾根少佐が言っていたよ。」

「なあんだ、やっぱり蟇の言ったことか。」

「あいつ誰にでもそんなこと言うんだね。