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じろうものがたり
次郎物語
下村 湖人
04 第四部
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 178,724 字 · 355 页
僕もきいたよ。」
「朝倉先生も、ひょっとすると蟇におどかされたのかも知れないね。」
「まさか。」
「しかし、朝倉先生の豹変ぶりは、とにかくおかしいよ。あれじゃあ、先生がいつも言っていた信念なんて、あやしいものだね。」
次郎は、そんな対話を耳にして、なさけなくも思い、腹も立った。しかし彼は先生のために弁解してみる気には、少しもなれなかった。どうせ衆愚というものはそんな程度のものだ。そう思って、心の中で冷笑していた。
駅の見送りには、生徒たちは一人も歩廊に入らず、駅から東寄りの線路の柵外に整列して見送る慣例になっていた。八百の生徒がせまい地域に整列するので、距離も間隔もない一かたまりの集団になるよりほかはなかった。五年が最前線だった。次郎はその右翼から五六番目のところに位置していた。
彼は、柵にからだをよせかけながら、何度も腕時計を見た。東京行連絡の急行は、三時五分発になっていた。あと十五分、十分、七分、と、時計の秒をかぞえながら、周囲のさわがしさの中に、ひとりで淋しさを味わっていた。
生徒たちの中には、いつの間に用意したのか、小旗などをもっているものもあった。