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じろうものがたり

次郎物語

下村 湖人

04 第四部

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 178,724 字 · 355 页

青空文庫

」

「いつ?」

「きょう、駅でさ。」

「駅で?」

次郎は顔が青ざめるほどおどろいた。

大沢が恭一に補足してもらいながら説明したところによると、こうだった。

二人は俊亮といっしょに少し早目に駅に行って、見送りの名刺受付の用意をしていた。するとオートバイで乗りつけて来た三十歳あまりの背広の男が、少しせきこんだ調子で、「朝倉さんはまだですか」とたずねた。まだだと答えると、「見えたらすぐお会いしたいのです。」と言って、すぐ駅長室の方に行ったが、間もなくまたやって来て、待合室をぶらぶらしながら、時計ばかり見ていた。俊亮が、「お見送りでしたらお名刺をいただかして下さい。」と言うと、「いや、いいです、お会いすればわかるんですから。」と言う。とその時には、発車までにまだ五十分近くも間があった。

それから十分あまりたって、朝倉夫人がやって来た。そして三人と話していたが、その男は夫人をじろじろ見るばかりで、何とも言わない。そのころまでは、見送り人もまだ見えなかったので、三人は夫人を相手にゆうべの話をし出して、笑ったり、しんみりなったりしていた。すると、その男がいつの間にか近づいて来て、四人のすぐうしろに立っている。