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じろうものがたり

次郎物語

下村 湖人

04 第四部

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 178,724 字 · 355 页

青空文庫

しかし、先生は落ちついた調子で、見送りの人たちにあいさつした。

「皆さん、今日はわざわざありがとうございました。つい、よんどころのないことで駅長室に行っていたものですから、ごあいさつがおくれまして。……」

見送りの人たちの中には、先生に近づいて来て、固い握手を交わしたものも二三人はあった。しかし、その多くは、ちょうどその時、けたたましい音を立てて、駅前の広場を走り出したオートバイに気をとられていた。

間もなくみんなは歩廊に出たが、朝倉先生は俊亮とならんで歩きながら、沈んだ調子で言った。

「さっきのは憲兵でしたがね、やはり、ゆうべのことが問題になっているようでした。しかし、かくすのは却っていけないと思いましたので、ありのままを言って置いたんです。あるいはご迷惑になるようなことになるかも知れません。白鳥会も、おそらくこれまでのように気持よくはやれなくなるでしょう。しかし、白鳥会はまあ仕方がないとして、何より心配なのは次郎君のことですが、……」

俊亮はただうなずいてきいているだけだった。

それから、先生はいよいよ列車にのりこむ直前になって、また俊亮に言った。