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じろうものがたり
次郎物語
下村 湖人
04 第四部
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 178,724 字 · 355 页
「あきらめるよりほかありません。」
「あきらめられるかね。」
「だってほかに仕方がないんです。」
「しかし、これはおまえ一人の問題ではないね。おまえはあきらめても、みんながあきらめなかったらどうする。」
「みんなにも、あきらめるように言います。」
「みんなはそれで承知するかね。」
「それはわかりません。」
「おまえもそれには自信がないだろう。」
次郎はだまりこむより仕方がなかった。俊亮はしみじみとした調子になって、
「時の勢いというものは、恐ろしいものだよ。五・一五事件もそうだったが、今度のおまえたちの問題も、どうせ行くところまで行くだろう。結局ストライキになるかも知れないね。」
「それは絶対にさけるつもりです。」
「さけるつもりでもさけられないよ。」
「まじめな五年生が五六人も結束すれば、さけられると思います。」
「その五六人というのは、留任運動の主唱者ではないかね。」
「ええ。ですからその五六人が結束すれば、きっと……」
「時の勢いというものは、一度出来てしまえば、それを作った人にもどうにも出来ないものだよ。現に五・一五がそうだろう。政党の腐敗を憤り、軍人が腐敗した政党と結んで政治に関係するのを快く思わなかった人たちは決して乱暴なことを企らんでいたわけではなかったんだ。