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じろうものがたり

次郎物語

下村 湖人

04 第四部

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 178,724 字 · 355 页

青空文庫

ところが、その人たちの考えが一旦時の勢いを作ってしまうと、次第に不純な分子や、無思慮な分子がその勢いに乗っかって来る。これではならんと思っても、そうなると、もうどうにも出来ない。そして、いよいよ五・一五事件ということになったんだ。時の勢いというものは、だいたいそんなものだよ。」

「すると、僕たち、どうすればいいんです。はじめっから留任運動なんかやらない方がいいんですか。」

「それをやらなくちゃあ、お前たちの正義感が納まるまい。」

「むろんです。」

「じゃあ、やるより仕方がないね。」

「しかし、お父さんが仰しゃるとおりですと、結局はストライキになるんでしょう。」

「それも仕方がないさ。」

次郎には、父が自分を茶化しているとしか思えなかった。彼は両腕を膝につっぱってしばらく默りこんでいたが、急にそっぽを向き、右腕で両眼をおさえると、たまりかねたようにしゃくりあげた。

「泣くことはない。」

と、俊亮はべつにあわてたようなふうもなく、

「何もかも自然の成行きだよ。学校がだめで朝倉先生だけがお前たちの希望だというのに、その朝倉先生を失うとなれは、留任運動をおこしたくなるのは当然だし、留任運動をおこす以上、少しでもそれを強力にするために、血書を書いたり、全校生徒に呼びかけたりするのも当然だ。