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じろうものがたり
次郎物語
下村 湖人
04 第四部
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 178,724 字 · 355 页
俊亮はそれに眼をやったが、べつに驚いたふうもなく、またゆっくりと口をきき出した。
「おまえは、もう、人のおだてにのるほど無思慮ではない。それはたしかだ。その点では私はおまえを絶対に信じてもいいと思っている。だが、その程度では、まだ人間がほんとうに一本立になったとはいえないんだ。ほんとうに一本立になった人間は、人のおだてに乗らないだけでなく、自分のおだてにものらない人間だよ。私はおまえにそういう人間になってもらいたいと思っている。英雄主義流行の時代には、おまえたちのような若いものには、それはなかなかむずかしいことだが、しかし、そういう時代であればこそ、私は一層おまえにそれを望むんだ。わかるかね。私のこの気持が?」
「わかります。」
俊亮は、次郎がいつの間にか、きちんと膝を折って坐っているのに気がついた。
「そう窮屈にならんでもいい。」
彼はそう言って次郎にあぐらをかかせ、天井のない、すすけた屋根裏を見まわしていたが、
「私がこんなことを言うのも、私の経験からだよ。実を言うと、私もわかい頃はかなりの英雄主義者でね、自分で自分のお調子にのって、今から考えると、まるで意味のない、ひとりよがりの義侠心を発揮したものだよ。