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じろうものがたり
次郎物語
下村 湖人
04 第四部
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 178,724 字 · 355 页
次郎は、しかし、かぶりをふって、
「それは君にあずけておく。僕が書いたこと、みんなに言わないでくれ。」
新賀はちょっと考えてから、
「うむ。」
と、大きくうなずいて、血書を自分のかくしにしまいこんだ。間もなく始業の鐘が鳴って二人は教室に入ったが、次郎は新賀に血書をあずけて何かほっとした気持だった。
ひる休みごろには、全校の気分が何となくざわめき立っていた。上級生の中には、五人、十人と、あちらこちらに集まって、すでに私的に意見を交換しているらしかった。次郎は、そんな様子を心強くも不安にも感じながら、自分ではなるだけそうした集まりに近づかない工夫をしていた。
授業がすむと、校友会の委員たちは、ある者は考えぶかそうに、ある者ははしゃぎながら、二階の一番おくの教室に集まった。そこは五年の教室のうちで教員室から最も遠い室だった。
みんなが集まると平尾がすぐ教壇に立って、きょうの集まりの趣旨をのべた。彼は最初のうち、朝倉先生に対する讃美の言葉や、その退職を遺憾とする意味の言葉を、かなり熱のこもった調子でのべたてた。しかし、終りに近づくにつれて次第にその調子が低くなり、最後につぎのようなことを言って、壇を下った。