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じろうものがたり

次郎物語

下村 湖人

04 第四部

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 178,724 字 · 355 页

青空文庫

」

「そうだよ。」

「そうすると、君は、先生が或は留任運動を喜ばれるかも知れん、と考えていたわけだろう。それが先生の人格に対する侮辱でないといえるか。」

平尾は、近眼鏡の奥で眼を神経的にぱちぱちさせるだけで、返事をしない。

「どうだ、諸君、諸君はこれを侮辱ではないと思うか。」

と、梅本はぐるりとみんなを見まわした。

「むろん侮辱だ!」

「先生を知らないにもほどがある!」

「留任運動を喜ぶような先生のために、僕らは留任運動をやろうとしているのではないんだ。」

そんな叫び声が方々からきこえた。すると誰かがまぜっかえすように、

「平尾は、朝倉先生をそんな先生だと思っているから、留任運動がやりたくないんだそうだ。」

どっと笑声が起った。それまで平尾は相変らず眼をぱちぱちさしていたが、急に立ちあがって、言った。

「僕は出来るだけ慎重を期するために、言いかえると、朝倉先生に現在以上のご迷惑がかからないようにと思って、先生をおたずねしたんだ。それが先生に対する侮辱だと言われては、全く残念だ。しかし、諸君の全部がそう思っているとすると、僕がいくら弁解しても駄目だろう。僕は自分では省みて一点のやましいところもないと思うが、梅本君の要求によって、いや諸君の全部の要求によって、いさぎよく座長の席を退こう。