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じろうものがたり

次郎物語

下村 湖人

04 第四部

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 178,724 字 · 355 页

青空文庫

すると誰かが、だしぬけに、とん狂な声で叫んだ。

「狸退散!」

それで、また、どっと笑い声が起った。その笑い声を圧するように、新賀がどなった。

「田上! 平尾がいなくなれば君が座長だ。さっさと席につけ。」

田上は今度は元気よく座長席についた。そして、

「さっきからの様子では、留任運動をやることだけは、もう満場一致と見ていいようだが、どうだ。」

「むろんだ!」

「賛成!」

と叫ぶ声が方々からきこえた。

「では、これからその方法を相談する。誰か案があったら、遠慮なく出してくれ。」

「それも、もうきまっているよ。」

いかにも冷やかすような調子でそう言ったのは馬田だった。彼は窓わくに馬乗りにまたがって、足をぶらぶらさせながら、そのしまりのない唇から舌を出したり、ひっこめたりしている。

「どうきまっているんだ。」

と、田上が不愉快そうに彼の方を見た。

「ストライキさ。」

馬田は田上の方を見むきもしないで答えたが、そのあと、すぐまた舌をぺろりと出した。

「いきなりストライキをやろうというのか。」

「いきなりでなくてもいいよ。しかし、どうせやるなら早い方がいいね。」

吹き出すような笑いごえが二三ヵ所でおこった。