轻松读懂日语经典作品
ja-reading.com
轻松读懂日语,轻松阅读日语。在线阅读日语经典作品。支持在阅读过程中显示假名、查询生词、翻译句子。
ぶしゅうこうひわ
武州公秘話
谷崎 潤一郎
01 武州公秘話
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 107,572 字 · 209 页
な真似はしないであろうと思われる。そう気が付くと、彼の好奇心と冒険心とは俄かに強められたのであった。
河内介は彼の頭上に高貴な夫人が君臨するのを暫く待っていたけれども、あまり久しくその坑の縁に留まる訳に行かないので、その日は空しく引き返したのであった。そしてそれから三日の間、ほゞ最初の日と同じ時刻に、かの石崖の下へ忍び寄って例の穴から地下道へ潜入しては、毎日一時間ぐらい根気よく縦坑の縁に息を凝らしていた。此の、善光寺の地獄めぐりにも似た彼の辛抱強い努力が漸く報いられる機会に恵まれたのは、三日目の午後であったと云う。彼は床の上にしとやかな足音がして暗い坑道へぼんやり明りがさして来たのを知ると、先ずカタリと微かな物音をさせて夫人の注意を促しておいてから、
「御台様―――」
と、出来るだけやさしく、低い声で呼んだ。
「―――申し上げることがございます、お目通りをお許し下さいませ」
その時衣ずれのおとが急に止んだので、夫人が人声のきこえて来る黒漆塗りの枠の縁に彳みつゝ静かに耳を傾けている様子が推量された。河内介は懐から図書の密書を取り出して、
「此のお文のことにつきまして、―――」