轻松读懂日语经典作品
ja-reading.com
轻松读懂日语,轻松阅读日语。在线阅读日语经典作品。支持在阅读过程中显示假名、查询生词、翻译句子。
ぶしゅうこうひわ
武州公秘話
谷崎 潤一郎
01 武州公秘話
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 107,572 字 · 209 页
大切な密書を彼女のなすがまゝに任せて只管恐懼しているようなのは、どう考えても不為めを謀る者の態度ではない。
「もし、これを御覧下さりませ。―――」
容易に夫人の警戒が緩みそうもないのを看て取ると、河内介は懐から小さな錦の袋を取り出して、それを二三度押し戴きながら云った。
「―――これは観世音のお厨子でござります。図書どのは唯今のお文を、此のお厨子に添えて肌身につけておられました。以来私は、及ばずながら図書殿の志を継ぎましたしるしに、片時も放さず所持しているのでござります」
彼が夢中でしゃべりつゞけながら、袋の口を開けて厨子を取り出そうとするのを見ると、夫人は
「これ」
と云って、此処が不浄な場所であることを思い出させるように眼でたしなめつゝ、勿体なさそうに手を振って制したが、それでも彼のしぐさが示す熱意には動かされたのであろう。
「そして一体、そちが味方をして賜る訳は?―――」
と、七分の威厳に三分の優しみを含めて云った。
「御台様、茲にもう一つ差し上げる品がござります。―――」
河内介はその問いには答えずに、再び懐を探ったかと思うと、今度も同じような金襴の袋に包んだ小型の壺を取り出して、それを恭しく夫人の前に捧げた。