轻读日语

轻松读懂日语经典作品

ja-reading.com

轻松读懂日语,轻松阅读日语。在线阅读日语经典作品。支持在阅读过程中显示假名、查询生词、翻译句子。

ぶしゅうこうひわ

武州公秘話

谷崎 潤一郎

01 武州公秘話

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 107,572 字 · 209 页

青空文庫

ぜんたい則重は、若い腰元共を集めて琴を弾かせたり、舞を舞わせたりすることが大好きだったので、ちと気晴らしにそんな催しをすればよいのだが、近頃は夫人とさし向いでしんみり酒を酌み交すぐらいが関の山で、とんとそう云う陽気な遊びをしない。それと云うのが、一つは春の花見の宴の出来事に懲りたせいでもあるが、一つは、元来彼自身が声自慢で、何かと云うとすぐに小唄を謡って聞かせたものだのに、残念ながら発音に故障を生じ、息がすう/\洩れると云う現状では、折角の美音も如何ともしようがない。で、自分が謡えないとなると、人の謡うのが羨ましくもあり、忌ま/\しくもなって来るので、管絃の宴を開いても一向面白くないのである。

さて九月も既に半ばに近づいた或る日のこと、ゆうがたから降り出した秋雨が夜になっても降り止まず、しと/\/\と、しずかに、土に滲み入るように降りしきって、軒端をつたう雫のおとがそゞろに人を物思いに誘うと云う晩、織部正は宵の口から夫人の部屋に閉じ籠り、侍女のお春に酌をさせて夫婦仲むつまじく盃の遣り取りをしていた。いとしい人を側に置いて蕭々たる雨の音を聞きながらチビリチビリやると云うのは、誰しも悪くないものだが、織部正もその晩は例になく酒がはずみ、大分平素よりも数を重ねて、珍しい上機嫌であった。