轻松读懂日语经典作品
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しんだちどり
死んだ千鳥
吉川 英治
「婦人倶楽部 臨時増刊」大日本雄弁会講談社、1937(昭和12)年3月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 15,539 字 · 32 页
『墨江殿……』と、伏原はずっと寄って、いきなり彼女の手くびを握った。
『――未来の出世をお身に譲った男の願いを、お身も、かなえて下さるだろうな』
『えっ……』
さっと、色を失って、墨江が後退さると、
『卑怯な!』
と、伏原は男の力で息づまる程、その顔を抱きすくめた。
『男の未来を犠牲にさせて、この儘、戻ろうなどと考えておいでたのか。さりとは、浅慮な。……実を云えば、恥しいが、人妻のあなたに、この半蔵は日頃からやる瀬ない思いを焦していたのでござる。身共も、未来を捨てて、あなたに上げる物を上げた。――当然な事だ! 拙者もあなたから求めるものを求めるのだ!』
『……もしっ! ……もしっ! ……伏原様。……伏原様。いけません! ……待って、待って。良人のあるわたくしの身、良人に、良人に……』
× ×
× ×
薄暗い出合茶屋の店先では、奥の客を忘れたように、老婆の仲居と小女が、帳場箪笥によりかかって居眠りしていた。
『…………』
川風が、門暖簾を揺りうごかす。――その暖簾のすそに、そっと佇んだ草履が見える。
侍とみえ、革足袋を穿いて。