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ししゃのけんり

死者の権利

浜尾 四郎

「週刊朝日 秋季特別号」1929(昭和4)年9月20日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 30,854 字 · 61 页

青空文庫

十一

その判決に、何故に被告人を執行猶予にすると書いてありましたか。甚だ婉曲にですが、この辺の消息を立派に洩してあったではありませんか。

判決は正しくないのです。判決は正義と相容れませぬ。妹はおそらく墓場で悲憤の涙にむせんでいるでしょう。私はあなたがあの法廷において堂々と述べられた通りあの意気を以て直ちに控訴せられると思いました。しかしあなたは、あの時の勢いにも似ず、判決を確定させました。無理もありません、あなたは小夜子の兄ではありませんから。

十一

凡そ国家が私闘を禁ずるゆえんは国家が被害者に代って正しい――然り、正しくなければなりません――裁きをするという前提をもっているからでしょう。

もし国家が故意又は過失によってその役目を果さぬ時清き者を汚れたりとなし汚れたるものを罰しない場合、なお且つ清かりし者は黙って忍んでいなければならぬものでしょうか。

私はそうは思いませぬ。清きままに殺された者は不正者を罰していいと思います。否、それは清浄なりし者の権利です。正しくそれは死者の権利であります。

私は復讐してやろうと決心しました。妹に代って春一をやっつけてやろうと決心しました。