轻松读懂日语经典作品
ja-reading.com
轻松读懂日语,轻松阅读日语。在线阅读日语经典作品。支持在阅读过程中显示假名、查询生词、翻译句子。
みとばいふ
水戸梅譜
山本 周五郎
「芸能文化」1942(昭和17)年11月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 12,607 字 · 25 页
光圀はしばらく眼をつむっていたが、やがて、つと手をあげて眼がしらを押えた。
「その者は姓名をなんと申した」
「はっ、いおき……なにがしとやら、恐れながら判然と記憶がございません」
「子があると申すからはまだ城下に家族がおるであろう、仔細を貼りだしてたずねるがよい、町奉行へもそう申付けるのだ」
主税はすぐにさがっていった。
五郎兵衛の死躰は鄭重に屋敷の一部へ移された。高札場へは時を移さず五百旗の家族になのって出るよう貼り紙をだし、また町奉行では城下町の隅々まで捜索の手をまわした。しかしそれと思える者はなのっても出ず、またどう捜してもみあたらなかった。三日めに五郎兵衛の死躰は荼毘にして埋葬され、光圀のてもとから供養料が寄進された。――男子があると云ったのだ、遺族はかならず付近にいるにちがいない。かたくそう信じた光圀はそれからもながいこと捜索をやめさせなかった、やがて江戸へ出府するときにも、そのことを繰り返し申付けていった。
五百旗五郎兵衛が自害した日の暮れがたのことだった。城下の西南に千波ヶ原という叢林と荒れ地のひらけた原がある。その原の一隅に、まわりを竹藪でかこまれたひと棟のあばら屋が建っていたが、その家のなかで母子ふたりの者がひっそりとして遠い暮六つの鐘を聴いていた。