轻松读懂日语经典作品
ja-reading.com
轻松读懂日语,轻松阅读日语。在线阅读日语经典作品。支持在阅读过程中显示假名、查询生词、翻译句子。
あぶらじごく
油地獄
斎藤 緑雨
「国会新聞」1891(明治24)年
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 34,624 字 · 69 页
貞之進は、何かは知らぬがただ一つ小歌に望むことがあるようで、その望がほとんど達し得られるようで、又達し得られないようで、更に考えればその望は向うが持って居るようで、こちらが持って居るようで、今晩それが打出したいようで打出されたいようで、千緒万縷胸に霞のいろ/\と乱れた耳元へ、二階から漏来る小歌の笑い声、もしや客は黒の羽織と云のではあるまいか、小歌の何かではあるまいかと思うと、ひとりでに二階が睨まれ、四五十分経って下りて来た小歌に、一番にどこの人と聞けば、横浜の方でお両人ですと云うにやゝ安心した。そしてその望と云うはどちらからも出ずに、貞之進ははなはだ遺憾げに帰りかゝる時、すっきりとした三十三四の鉄漿つけた内儀が礼に出て、門口まで送って来たが、歌ちゃん明日は縁日ですよと婢が云うを、小歌はそれには答えずして、あなた明日入来いな不動さまですよと、取次ぐように貞之進に云うと、お約束を願うサと内儀がこれを簡易に説明し、明日はと貞之進は少しく躊躇したが、悪く云れまいの念が先へ立って、そして一つには切脱ける口が重く、ついに宜いで点頭いて、半丁ばかり来て振返れば、春泉の二階になお燈光が見える、小歌はあのまゝ帰るか知らん、もしひょっと、もしひょっと、あゝもしひょっと、小歌はあのまゝ帰るか知ら