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ねこののみとりぶし

猫の蚤とり武士

国枝 史郎

「夕刊大阪新聞」1934(昭和9)年8月7日~12月28日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 185,496 字 · 368 页

青空文庫

相当大身の武家の子弟――兄と妹とが供人をつれて、遊山の旅へ出かけて来た。――といったような姿であった。

ところでこの日刃三十郎も、民弥を討つべく梶子を奪うべく、人形箱をも奪うべく、同じこの道を京に向かい、旅に出かけた筈なのであるが、さてどこにいるのであろう?

その姿はわからなかった。

が、いやらしく気味の悪い、問屋から追い出された雲助と、馬を取り上げられた博労と、乞食の一群とが合併したような、そんな一組がこの街道を、何んとはなしに連絡とって、わが物顔にぞめいて歩き、旅人にぶつかって喧嘩を売ったり――わけても民弥と梶子との二人へ、悪てんごうを仕掛けるのが、苦にかかる現象というべきで、その中に三十郎がいるのかもしれない。

数日の間はこともなかった。

が、数日を経過した夜、浜松の城下で事件が起こった。

城下の外れにかなりみすぼらしい、諸人宿が一軒立っていたが、その門口から浪人らしい武士が、フラリとばかり外へ出た。

蚤とり武士の兵庫であった。

と、次々に五人の男が、その宿から外へ出て、城下の夜の景気見物――といった風にブラブラ歩き、兵庫の後へ従ったが、他人顔して同じ宿へ泊まった、明暦義党の同志なのであった。