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ねこののみとりぶし

猫の蚤とり武士

国枝 史郎

「夕刊大阪新聞」1934(昭和9)年8月7日~12月28日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 185,496 字 · 368 页

青空文庫

「拙者なんとかいたしましたかな」

「……いいえ別に……でも……あのう……」

「あのう……ハイ……あのう……それから……」

「妾の心をお汲みくだされて……」

「エヘン!」

とひどい咳をした。

でも梶子は一生懸命に、

「恋を……想いを……妾の想いを……」

この時備前屋の方角から、爆発の音が幽かに聞こえた。

素破や! と民弥は半身を起こした。

梶子も思わず耳を立てた。

とまたも爆発の音がした。

(さてこそ!)

と民弥はいよいよ思った。

(表門に仕掛けた地雷火と、裏門に仕掛けた地雷火とが、つづけざまに爆発したらしい!)

間もなく備前屋の方角から、喧騒の音が聞こえて来た。

(いよいよ火事になったらしい。……同志の方々討ち入ったであろう)

民弥は武者ぶるいを感じて来た。

と、何んという奇怪なことか、この部屋の中へ濛々と、煙りが侵入して来たではないか!

「や、煙りが! ……どうしたのだ!」

と、民弥は床から飛び起きた。

梶子も驚き床から起き、

「まあどうしたのでござりましょう」

こうは云ったもののすぐにも民弥を、口説き落として自分のものにしようと、決心をした時だったので、こんなことで二人ながら起き上がったことが、どうにも残念でならなかった。