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ねこののみとりぶし

猫の蚤とり武士

国枝 史郎

「夕刊大阪新聞」1934(昭和9)年8月7日~12月28日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 185,496 字 · 368 页

青空文庫

隠したところで仕方がない。……よしんば隠していたところで、この邪智ぶかい三十郎が、眩まされる筈はないのだから)

こう思って思い切って云ったのであった。

「首ったけ! フフン、なるほどなあ」

三十郎は不快そうに云った。

梶子が民弥に首ったけだ! ……ということは云われないでも、三十郎にはわかっていたが、しかし自分が恋しているところの、梶子によってそんなように、ズバリとばかり云われては、不快に思わざるを得なかった。

「おおかたそうとは存じていましたが、そうハッキリと仰せられては、拙者テレざるを得ませんなあ」

「テレるような言葉を云い出させたのも、お前さんのやり口が悪いからさ」

「やり口が悪い? やり口とは?」

「このようにあたしを手籠めにして、こんなところへ連れて来たことさ」

「それというのもあなた様を、わたくし恋しておりますのでな」

「そこでハッキリと云っておくが、あたしにゃア今も云ったとおり、民弥さんという人があるのだから、色だの恋だのとイヤラシイことを、今後は云って貰いますまいよ」

「そうか!」

と腹に据えかねたように、三十郎は悪党の本性、そいつを露骨にあらわして、威嚇するように荒々しく云った。