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ねこののみとりぶし

猫の蚤とり武士

国枝 史郎

「夕刊大阪新聞」1934(昭和9)年8月7日~12月28日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 185,496 字 · 368 页

青空文庫

と、但馬ははじめて威嚇的に云った。

「実力でお受け取りいたさねばならぬが……」

「もちろん承知、そのつもりでござる。……実力で我らお渡しいたさぬ!」

「そうなるとご領主井上河内守様とも、張り合うことになりまするがな」

「…………」

「というのは我らのご主君には、天下をくつがえす謀叛人が、領地内にいるのは不都合千万、猟り取れとあってお城より、兵を出しましてござりますからじゃ」

「徳川幕府に対してさえ、いわば戦端をひらいた我ら、アッハッハッハッ、ご領主なんど……」

「ホ、ウ、恐れぬと仰せられるか!」

「こうなっては何者をも恐れぬ!」

「貴殿はまアまアそれでもよかろう。しかし青塚の郷民が……」

「一心同体二十軒の郷民、ことごとく拙者と同意でござる」

「ご領主を相手に張り合われて、勝ち目ありとでも覚しめしてか?」

「なんのなんの勝敗なんど、我ら眼中にはござらぬよ」

「みすみす負ける戦と知って……」

「こうなりましてはやむを得ませぬ」

「フーム」

と云うと志水但馬は、腕を組んで黙ってしまった。

加藤源兵衛はこの時まで、ジリジリしながら聞いていたが、憤然として立ち上がった。

「談判は破裂じゃ。