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ねこののみとりぶし

猫の蚤とり武士

国枝 史郎

「夕刊大阪新聞」1934(昭和9)年8月7日~12月28日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 185,496 字 · 368 页

青空文庫

で民弥は梶子をうながし、犬帰村の方へ向かったのであった。

今二人は馬首を揃え、峠道を歩いて行く。と、左手の林の中から、馬の蹄らしい音が聞こえた。

(はてな?)

と二人ながら耳を澄ました。

二頭の馬の蹄の音らしい。

自分たち二人と並行して、犬帰村の方角へ、走らせて行くように思われた。

「おかしいねえ」

と梶子は云った。

「さよう、少しく変でござるな」

民弥もそう云って首をかしげた。

「炭でも積んだ馬を曳いて、百姓が帰るのでござりましょうよ……さあ、そんなものはうっちゃっておいて、急いで行くことにいたしましょう」

梶子は先を急ぐように云った。

「それがよろしゅうございますな」

民弥もそう云って馬を走らせた。

しばらく二人は無言で進んだ。

と、梶子が笑いながら、

「わたくし思うのでございますよ。あなた様が以前からあの人形に、執着をお持ちなさいましたのは、黄金島の秘密の地図が、あれにかくされてあるということを、実はご存知であったからだと」

こう云って民弥を覗くように見やった。

「いや、決して……」

と民弥は云った。

がしかし民弥はふと思いついた。

(この女がそんなように思っているのなら、そう思わせておいた方がいいらしい。